>保管庫
花重
花を落とした古木の根元に、それは、俯せるように身体を丸めて横たわっていた。
濡れるというよりは湿るという言葉に相応しい雨は、冷たくこそないものの、温かいものではなく、無視するにはその図体は少しばかり大きすぎた。
砂利の多い土の上に投げ出された肩が、つま先の触れる一歩手前でぴくりと反応する。
剣呑な光を僅かに帯びた視線が、眼球の動きだけで赤石を見上げる。
「・・・アンタか」
それだけを呟いて、再び閉ざされる瞼。
拒絶の気配。
「何の真似だ」
「放っておけよ」
「死体にでもなるつもりか。だったらもう少しまともな方法を考えるんだな」
「・・・放っておけと言っている」
口を開くのも大儀だと言わんばかりの口調。
そのまま遮断される反応。
雨は音もなく降っていた。
2002/09/01 掲載。