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炎舞

 

 全ての明かりが落とされると、辺りは薄闇に包まれた。
 高く組まれた足場にちらちらと種火が行き交う。
「いったい何が始まるんです?」
 いいかげん教えてくれても良いでしょう、と問う飛燕に、虎丸は人差し指を立ててみせる。
「いいから黙って見てろって。見てりゃ解かるからよ」
 何かが始まる前の一瞬の静寂。
 そして、次の瞬間、種火を持つ塾生たちの鬨とともに、鮮やかな炎の色が眼前に生まれた。
 それは、足場に這わされた荒縄を伝って燃え広がり、文字を描き出す。
「・・・なるほど。こういうことでござったか」
 静寂が歓声に変わったところで、ようやく得心がいったと、雷電が頷く。
「いきなり縄を綯えと言われたときは何事かと思い申したが」
「そう、理由もなく縄を綯わせてたわけじゃないんだぜ」
 花火みたいに派手じゃあないが結構良いだろ?と、満足げに虎丸が笑ってみせる。
「それならそうと教えてくれてもよかったじゃないですか」
「教えちまうと面白くねぇだろ」

 夏の夜に、煌煌と炎が燃え上がる。

 

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2002/07/21 掲載。