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日々是好日

 

 晴天無風の好天気。

「なんじゃあ、またやらされとるのか?」
 開け放たれた窓の向こう側から、ひょいと顔を覗かせた虎丸が呆れたように問い掛ける。
 しかし、次の瞬間、凄まじい勢いで眼前に棒端を叩き込まれ、思わず首を引っ込めた。
「おい、壊すなよ」
 がしゃん、と耳障りな悲鳴を上げた窓格子とデッキブラシに、入口に座り込んで一部始終を見ていた桃がぽつりと忠告する。
「うるせぇっ」
 打ち返すような怒鳴り声はいったいどちらに向けられたものか。
「見てねぇで手伝いやがれっ」
「そう言われても、俺は飛燕に、お前が逃げないように見張ってろと言い付かってここにいるわけで」
「手伝うなとは言われてねぇだろうが」
「一人でやらせるようには言われたけどな。ほら、早くしないと時間がないぞ」
 不機嫌もあらわに、がなって見せる伊達をあっさり受け流し、桃は壁の時計を指し示す。
 先刻からこの調子で掃除は一向に進まない。
 見つからないようにと小さく溜息を漏らせば、椅子が勢いよく投げつけられた。
「壊すなといってるだろ、伊達」
「壊してねぇだろうがっ」
「伊達」
 子供のような言種に盛大な溜息が漏れる。

 なんだかんだあるものの、どうやら今日も平和であるらしかった。

 

窓の外。>>>

みなせあきらさんの「肉体派!」に寄せて。[2002/04/27:掲載]