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ムーンパレス

 

 言いようのない居心地の悪さを感じて、かすかに顔を顰める。
 見なれない部屋。聞きなれない音。着なれない服。
 それらがこんなにも落ち着かないものだと、今はじめて気付いた気がした。
 帝國騎士団への入団に伴ってその官舎へと移ったそのときにもこんな居心地の悪さがあっただろうかと、自分の記憶に問うてみる。
 しかし答えは返らなかった。
 手のひらに包んだカップから伝わる熱。あわく揺らめく蒸気。
 そういえば、あの官舎にも、別の誰かが入ることになるのだろうかと、ふと考える。
 それは、知らずに刺さった棘のような感覚を、彼の中に生じさせた。
 次第に更けてゆく窓の外。深い色をした空を映した窓ガラス。
 そこを、白い月が泳いでいた。

 

児玉少尉。帝國コードにいろいろ引っかかる気がする。[2000/08/25]