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己という存在

 

 快晴すぎるほどに晴れ渡った空には、強い日差しを放つ太陽。逃げるようにもぐりこんだ日陰は、繁る樹木の下。
 すでに原型をとどめていないにもかかわらず、虫の死骸であることが知れるグロテスクな欠片が無数に散らばる足元。
 周囲には注意深く見渡す迄もなく、原型をとどめた死骸も転がっている。
 寿命故の姿であるはずのそれがもたらす、己が殺戮者になったような錯覚。
(・・・あながち間違いでもないか)
 白い手套に包まれた自分の手のひらに、ふとそんなことを思う。
 生死も己が存在さえも確固として別たれない不確実な世界と言えども。自身がこの世界の存在である限り。

 それでも、ここが己の居場所なのだと、一片の曇りもなく思えるならば、それは幸いであるに違いなかった。

 

これにて更新終了予定。[2005/08/24]