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文章修行家さんに40の短文描写お題

 

000. お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。  【38文字】

 「みけねこ堂雑貨店」の永良悠です。
 よろしくどうぞお付き合いくださいませ。

 

001. 告白  【35文字】

 後悔の欠片もなく持ち上がる口角。
「ねえ、これでも君は僕を裁くかい?」

 

002.   【33文字】

「全部嘘だよ」
 その言葉こそが嘘だと、その時、誰が気付けただろう。

 

003. 卒業  【33文字】

 紙切れ一枚と『肩書き』。
 そして、僕らは新しい束縛を手に入れる。

 

004.   【50文字】

 一人になりたくて黙って切符を買った。
「・・・なんで居らんねん」
 なのに、隣に君がいないことに腹が立つ。

 

005. 学ぶ  【64文字】

「確かに、あの頃に比べて身長は伸びた。でも、僕はそこに何を蓄えてきたんだろう?」
 僕はうんざりとして答える。
「諦め、じゃない?」

 

006. 電車  【51文字】

 夕暮れのホーム。
 生命維持装置に縋る患者のように、耳に流れ込む音楽に縋って、僕は鉄の柩を待っている。

 

007. ペット  【54文字】

 鎖で繋いで、檻で囲って。
 それなのに君は叛逆を唆す。
「いつまでも、大人しく飼われてるつもりはないんだろ?」

 

008.   【57文字】

「あめ玉いる?」
「なんで?」
「さっきからずっとストロー噛んでるし」
「は?」
「疲れてるときは、甘いものがええんよ?」

 

009. おとな  【57文字】

「もうちょっと大人になりなよ」
「なりふりに構って手も伸ばせないのがあんたの言う"オトナ"なら、俺はガキで十分だね」

 

010. 食事  【50文字】

「魚ってさ」
「うん」
「肉食うよね」
「水死体とか結構食われてるって言うよね」
「・・・メシ時の話かよ、それ」

 

011.   【48文字】

 読書は手軽な逃避手段だ。
 しかも、身体的依存傾向は殆どない。
 ・・・精神的依存傾向は知らないけど。

 

012.   【50文字】

 獏は他人の夢を食べる。
 そして、満腹になった後で考えるのだ。
 自分の夢は、一体誰に食われるのかと。

 

013. 女と女  【45文字】

「可愛いね。流石ママの子だ」
「あたしはママの子だから可愛いわけじゃないわ。一緒にしないで」

 

014. 手紙  【52文字】

 白紙の便箋を前に君は絶望的につぶやく。
「書くのは簡単だよ。でも、出せないんだ。ポストまでが僕には遠い」

 

015. 信仰  【55文字】

「祈っても無駄だよ」
 月光を背に、少年は残酷な言葉を吐く。
「だって、貴方を貴方がいちばん信じていないんだから」

 

016. 遊び  【61文字】

「こんなん、遊びやし」
(そう言う自分が、いちばん悔しがってるくせに)
 そんな言葉を辛うじて飲み込む。八つ当たりはごめんだ。

 

017. 初体験  【45文字】

 またひとつ、新しいものを獲得する。
 その喜びを得るために、僕らは未知へと挑み続けるんだ。

 

018. 仕事  【64文字】

「これが自分の役割だと割り切ってしまえば楽になる」
 その言葉に偽りはないのかもしれない。
「でも、本当にあんたはそれでいいのか?」

 

019. 化粧  【60文字】

「たてがみがあったり、色が綺麗なのって、大抵オスだろ?なのに、化粧して着飾るのは女なのな」
「なに?化粧したいの、お前?」

 

020. 怒り  【53文字】

「怒るっていうのはとてつもなくエネルギーを消費する。
あんな奴らのために使うなんて馬鹿げてると思わないか?」

 

021. 神秘  【44文字】

「からくりがわかればただの定理だよ」
「そのからくりがわからないから不思議なんじゃないか」

 

022.   【46文字】

「噂が当てにならないって、俺は今つくづく実感した」
「そうか?」
「噂以上に底意地悪いわ、お前」

 

023. 彼と彼女  【60文字】

 その二人の間には、僕が友達だという以外に接点はない。
 僕一人分の距離を越えるのに、彼らはどれだけの時間をかけるだろう。

 

024. 悲しみ  【55文字】

 背中を向けたままの君の手は、繰り返し壁を叩いていた。
 あのときの君は、決して怒っていたわけじゃなかったんだ。

 

025.   【59文字】

 ぎゅっと寄せ合った身体から互いの鼓動が伝わる。
 所詮別々の個体なのだと告げる、少しも重ならないその音が、悲しかった。

 

026.   【60文字】

 指先を絡めた互いの手を目線に掲げ、額を押し当てる。どちらからともなく微笑がもれた。
「・・・一緒に死ぬんが、お前でよかった」

 

027. 芝居  【64文字】

「嫌いって嘘やからな?」
「わかってる、て。台本に書いてあるだけやろ?」
 ほんとは、幾ら台本通りでも聞きたくないけど、そんな言葉。

 

028.   【51文字】

 伸ばされる腕に身を委ねる。
「なあ」
 不意の呼びかけにふと瞼を開いた。
「何?」
「やっぱり、心もくれよ」

 

029. 感謝  【42文字】

 握った手のひらに力が篭る。
 ここにいてくれてよかったと、言葉ではなく伝えたかった。

 

030. イベント  【52文字】

「久しぶりに跳んでみようか?」
 誰がどれだけ大きな水溜りを飛び越せるか。
 それがあの頃のイベントだった。

 

031. やわらかさ  【59文字】

 日向の布団。積もったばかりの新雪。
 欠けた君が君自身を傷つけないようにそんなものになりたいのに、僕はいつも間違える。

 

032. 痛み  【57文字】

 うっすらと開かれた瞼の奥でその眼差しが不審を宿して揺れる。
 次の瞬間、その唇が紡いだ言葉に耳を疑った。
「・・・誰?」

 

033. 好き  【58文字】

「いちばん簡単につける嘘?」
 唐突な問いに虚を突かれた風もなく、にやりと笑う。
「そりゃ、"好き"って言うことやん?」

 

034. 今昔(いまむかし)  【60文字】

「・・・昔は可愛かったのに」
「今でも可愛いやん?」
「自分で言うな、自分で」
 零れるため息は、未だ付き合い続ける自分への憐憫。

 

035. 渇き  【50文字】

 この手を離したくないと思う気持ちは、喉を灼く焦燥のようで。
「君がいないと、僕はきっと枯れてしまう」

 

036. 浪漫  【62文字】

「え、それって男の夢っしょ、浪漫っしょ?」
 畳み掛けるような言葉に軽い頭痛。
「空想とか幻想とか妄想とどう違うわけ、それは?」

 

037. 季節  【60文字】

 ざくざくと足元で音を立てる雪。それでも既に固い蕾をつける枝に、隠れた陽射しを思う。
「君を待つんも、いい加減慣れたし?」

 

038. 別れ  【26文字】

 ホームで君を見送る。
 どうせ明日も会うんだけれど。

 

039.   【49文字】

 身体だけでいいなんて嘘だ。
「なあ」
 呼びかけた声に開かれる双眸。
「何?」
「やっぱり、心もくれよ」

 

040. 贈り物  【57文字】

 小さな包み一つで顔が綻ぶ。それに気づいて、ぺしぺしと自分の頬を叩いた。
「あかんって、せっかく内緒で用意したのに」

 

[2005/12/31:掲載]
配布元:文章修行家さんに40の短文描写お題