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六花

 

 頭上を覆う黒雲。吐き出す息は白く、色濃く立ち込めるのは雪の気配。
 町並みから頭ひとつ飛び出たビルの屋上。すべての喧騒を吸収したが如き静寂。
 組んだ腕を乗せ、上体を預けていたフェンスが軋む音すら何かに飲み込まれていくようで。
 吹き上げる風。腕を解き、身体を反転させて天を仰ぐ。
 ひらり、六花(むつのはな)が舞い始めた。

 

桃。[2008/02/10]