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無間を歩む

 

 緩み、解けかけた晒が腕にまとわりつく。
 こめかみを伝うものを手の甲で拭えば、そこには赤い色が付着した。
 それを隙と見たか、いまだ辛うじて立ち上がるだけの気力を残していた一人が、武器を手に赤石へと挑みかかる。
 決死の一閃。
 視界の端に赤い色が開く。
 言葉通り死物狂いとも言うべき一撃に気力を使い果たした相手は、そのまま地面へと倒れ臥した。
 腕を伝い、手のひらから指先へと至った己の血に、赤石はにやりと笑う。
 そこに力量の差があろうと、真正面から命を賭けてくる相手は嫌いではない。
 ざわりと、足元で枯草が騒ぐ。
 晴れた雲間に月の盃が姿を見せた。

 

店内カウンター15000突破記念品の期間限定フリー原稿。[2003/10/26]