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死人花

 

「ああ、カジバナだろ」

「キツネノカミソリですね」

「マンジュシャゲだな」

 秋口に一週間ばかり盛りを見せる赤い花。
 群れては散り、散っては群れて咲く様は、心を引き、同時に忌避を呼び覚ます。
 問うた名前は、人それぞれにさまざまで。
 一面にその花が点在する土手に混じる黒い人影は、見慣れた同輩の姿。
「桃」
「ん?」
 振り向いた桃の足元で猫の泣き声が上がる。
「お前はこの花をなんと呼んでいる?」
「・・・ああ」
 問いかけた言葉に、視線は一度周囲の花を見やり、納得したように頷いた。

「死人花(シビトバナ)だな」

 

Jと桃。[2005/10/04]