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往くも帰るも

 

 寿命が尽きかけたような街灯。
 雨は未だ傘が必要ではないような状態で、ごく稀に頬や鼻先を打つ、水滴とも呼べぬ冷感と、濡れた足元にそれと知れる程度。
 国道県道を外れた裏路地とも言える生活道路に車影は少なく、中華料理屋の黄色い看板だけがやけに目立っていた。
 特に連れ立って出たわけではなく、それぞれ何かのはずみで、たまたま行き会ったというだけで、他愛のない会話をぽつりぽつりと繰り返し、多くの時間を無言のまま、のらりくらりと肩を並べて歩いている。
 互いの用件など気にはしないし、帰る塒はどうせ同じ。

 それは、とくになんということもない日の宵。

 

桃と伊達。題名は蝉丸。
桃と赤石ならば桃が下がって歩き、伊達と赤石ならそれぞれ反対側の道の端を歩く。[2005/01/27]