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ここは誰かの死んだ場所

 

 かんこんかんこんと頭上で点滅する赤い警告灯。
 黄色と黒に塗り分けられた竿がゆっくりと眼前に降りてくる。
 そうして数十秒。
 通りすぎていくのは轟音と突風。
 傍らの見知らぬ他人が不快げに左手をイヤホンに押しつけた。
 竿が上がり、ばらりと人が動き出す。
 同じように渡りきったその路傍に残る、朽ちた花束。
 ここは誰かの死んだ場所。
 人は幾つもの屍を、文字通り踏みつけて生きている。

 

桃。[2004/12/17]