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奇妙な光景

 

 この冬最強の寒波が到来した日。
 空は幸いにも晴れていたが、空気は身を切るかのように冷えていた。
 何を好き好んでこんな日に出歩いているんだか。
 自分で自分の行動を嘲笑う。
 大した用事も、理由もない。ただ単に手持ち無沙汰だっただけだ。
 『ごみを捨てるな』と書かれた立て札の傍らに積み上げられた、丸く膨れたレジ袋。
 数十メートルばかり先にあるゴミ捨て場。
 設えられた自動販売機とゴミ箱の足元で置きざられた空き缶。
 当たり前の、奇妙な光景。
 ポケットに両手を突っ込んだまま、その前を通り過ぎる。
 人間の善悪は些細なところで自覚なしに麻痺するらしいと、微かに思った。

 

伊達。[2004/01/17]