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狂骨/花首

 

 朽ちた古井戸。
 点々と散る、紅い花首。
 ふと感じた気配に、思うより早く、刀は鞘から放れていた。
 踏みこんだ足元で、ざっ、と砂が鳴る。
 下段から切り上げた切っ先の向こうに、嫣然と微笑う女。
 大きく抜いた襟から白い首がのぞく。
 腕に抱かれたしゃれこうべ。
「・・・失せろ」
 ころりと、足元に花の首がひとつ、転がった。

 

「月に叢雲、綿毛に風。」のうめ吉さまがイラストを描いてくださいました。[2003/10/22]