>保管庫

 

 その姿を見つけたのは、偶偶だった。
 桜ばかりの目立つ敷地内にあって、怖じることなく根を生やした藤の根元。
 その先にいったい何が見えるのかと問いたくなるような視線は、普段の不敵さの欠片も見えない気がした。
「・・・おい」
 真正面からかけた声は、ゆるりと持ちあがった視線で返される。
 頭上の十六夜月が足元に落とす淡影。
「お前も眠りそこなったのかよ」

 

人物は富樫と伊達。というか、富樫視点で伊達。[2003/07/09]