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The Voices of The Father

 

 激しい雨に打たれてうずくまったそれは、もう明らかに、助かる見込みというものをうしなっていた。
 申し訳程度にかけられた新聞紙も、すっかり濡れそぼり、もはや何の役にも立っていないように見えた。
 足を止めたのはどうしてだろう。
 自身も雨に打たれながら、足元で尽きていく命を眺める。
 もはや鳴く気力さえないと思われたその猫は、最後に一声だけか細く鳴いて、息絶えた。
 どれだけそこに立っていただろう。
 気が付けば、富士の火口で自分を助けた男が、足元にしゃがみこんでいた。
 丁寧に土を掘り、骸を埋める。
 それを何処か遠い出来事のように眺めていた。
 何処を歩いて、何を話したか。何時帰りついたのか。
 ずぶ濡れの我が身に乾いたタオルと小言を与えられ。
 湯に浸した指先がじんと痺れる。
 そうしてようやく、自分の身体が冷えていたことを知った。

 

題名はGRASS VALLEY「THE VOICES OF FATHER(血を流さない神の声)」。[2003/03/23]