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恋文

 

遠國に心と馳せり雪しまき
別れ路に白木蓮の影眺む
君をただ待つも悔しい水中花
秋雨を避ける地下道 触れる指
自転車の背中は青く鰯雲
秒針と河鹿の声のみ零時過ぎ
花いばら 鳴らぬ電話と眠りゐる
流灯とともに消えよ 君の影
薄氷のごとき恋路を渡りゆく
人波に消える君の背 雪の果て
君の声 聞きたくはない神の留守
何もかも忘れて眠る山のごと

 

[2001/02/26]