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教室のファントム

 

うす暗き教室(へや)を彩るテキストに赤く線引く青白き右手
紙ずれと声の重なりは響きゆき不思議と似つかふ不協和音
空はいずれ雪とならむとぽつり呟く声はいづこか
黒板に白く残れる西暦に指折り数ふ担任の歳
透明の魚一匹逃げてゆく 世界の間(はざま) 色硝子の海
“But for water” ・・・・ならばあの魚は幻(ファントム)
“オペラ座の怪人(ファントム・オブ・ジ・オペラ)” この世の誰もが仮面の怪人(ファントム)
窓の外 行き過ぐ風は細雪 昔はいづこの蝶のはばたき
“私はオペラ座の怪人” 呟く声はチャイムにかすみ
全てがもう一枚の仮面をかぶり 演じ続ける人波の中

 

[2000/05/12:掲載]

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