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地下を走る

 

 カタコトと身体へと伝わる振動。
 向かい合う窓硝子に、自分の顔と背中が見える。
 変わり映えのしない暗闇。
 乗客のざわめき。駅のアナウンス。
 意味を持たない言葉の羅列。
 静かにまとわりつく睡魔。
 足元をふらふらと泳ぐ小さな羽虫。
 ふと顔を上げれば、向かい合う窓硝子に映った自分の隣に、見慣れた『貴方』の姿があった。
 目が合った一瞬、その姿は不意に掻き消える。
 窓の向こうは変わり映えのしない暗闇。

 列車は、遥かとおい街の地下を走っている。

 

[2000/04/28]