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花幻視

 

 不意に、甘い匂いが周囲を漂った気がした。
 満開の花にも似た、甘い匂い。
 耳に届く、子どもの声と駆けてゆく足音。
 日曜日の昼下がり、いつもの人ごみの中。
 傍らをすり抜けていったそれらにふとふり返れば。
 いつもと変わらぬ雑踏が広がるだけ。

 

[2000/02/12]