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絞首刑

 

 赤いコートから覗く、白い首。
 そこに手を伸ばしたのは、自分でもよくわからない、無意識にも似た衝動だった。
 今の自分ならば、片手でも十分につかめそうな首筋に両手を沿わせる。
 目蓋を閉ざした兄は、ぴくりとも目を覚ます気配を見せず。
 このまま力を込めれば、きっと簡単に気道は押しつぶされることだろう。
 呼吸と血流は塞き止められ、兄の命は奪われる。
 ぐるぐるとぼくの魂はそんなことを考え続けて。
 その首を絞めることも、両手を離すこともできないまま。
 そんな時、ふっと兄が目を開けた。
「・・・絞めねぇの?」
 兄の両手が、それでもまだ解くこと出来なかったぼくの手に重ねられる。
「さっきから待ってたんだけどな」
「兄さん・・・!」
「お前が望むなら、俺は、構わないんだ」

 

狂いアルというか、狂いエド。[2004/11/24]