>保管庫
血がつないでいる
アルの背中に片頬を押し当てる。
「兄さん?」
弾みで小さく軋んだ鎧に気付いたアルが、読んでいた本から顔を上げる気配が伝わった。
「どうしたの?」
「別に。背凭れに丁度いいなと思って」
その言葉は、嘘だ。
そっと、アルにわからないように鎧の表面を撫でた指の向こうには、小さな錬成陣がある。
「もう、しょうがないなぁ」
苦笑したみたいに呟いたアルが、再び手元の本へと戻る。
(なあ、アル)
あの時、お前を取り戻せなかったら、俺はどうしてたかな。
俺は、どうなってたかな。
罪悪感だか何だかに押し潰されて、死んでたか?
手足を失ったまま、死人みたいな状態で生き長らえてたか?
お前を取り戻すために、やっぱり軍の狗になってたか?
全部仮定だ。
でも。
たまに考えるんだ。
お前がいなかったら、俺は今、ここに立ててたか?
返せよ!! たった一人の弟なんだよ!!
アル。
お前の中にある、その錬成陣は。
多分、お前の魂だけじゃなく。
俺の魂も、ここに繋ぎ止めている。
[2004/02/05]