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牙を剥く

 

 目の前にある身体を抱きしめる。
 自分の右腕と相手の身体が擦れる音がした。
「兄さん?」
 いぶかしむような声。
「どうしたの?」
 それには答えず、ただ両腕に力をこめる。
「・・・・兄さん?」
 片手片足。そして全身。
 神様の領域とやらに踏み込んだ罰。
 それでも屈するわけにはいかない。
「ねぇ、どうしたのさ。兄さん」

 たとえ四肢をもがれても、蛇は翼を広げ、反逆の牙を剥く。

 

[2004/01/21]