>保管庫

『遺書』

 

 なあ、アル。お前は『これ』に気付くかな。
 いつか、俺がいなくなった後で。

「ねえ、兄さん」
「ん?」
「だいぶ傷んできたね、その手帳も」
「そーだな」
「何冊目になるんだっけ」
「4冊目だったかな」
 装丁の擦り切れはじめた手帳。
 中に収められているのは、旅行記を模した「世界理論」。
 そして、十重二十重に置換し、暗号化を繰り返した、「遺書」。

 なあ、アル。お前は『これ』に気付くかな。
 いつか、俺がいなくなった後で。

 

[2005/04/23]