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祈りの許可

 

 りんごんと響く葬送の鐘。
 遠くに見える喪服の人々。
 すすり泣く声も、悲しみの息吹も、はっきりと読み取れるほどここまでは届かないけれども。
 棺にすがりつく小さな人影。
 その中に横たわるのは、彼、あるいは彼女の、父親だろうか、母親だろうか。
 それとも、兄弟だろうか、姉妹だろうか、友人だろうか、恋人だろうか。
「・・・・アル」
 数歩先で立ち止まった兄に呼ばれて、知らぬうちに止まっていた足を再び進める。
 りんごんと響く葬送の鐘。
 先の見えない白い砂利道。
 どこへたどり着くとも知れないぼくらが背負うものは、深い深い罪かもしれないけれど。
 見も知らぬ誰かのために、そして、見知った人たちのために。
 祈ることぐらいは、ぼくらにも許されるでしょうか。

 

[2004/09/17]