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止まぬ思考を道連れに

 

 弟を独り宿に残して食事に出た帰り。
 今晩限りで引き払う予定の宿までは、角を二つ曲がって後はまっすぐ。
 けれど、そのまま帰る気がしなくて、角を一つ、余分に曲がった。

 追いかけてきた噂がガセだったり、全く関係ないものだったり。
 そんなのは、もう毎度のことで、今更落ち込むことでもない。
 目指すものが簡単にたどり着けるものではないことも十分わかっている。

 それでも。

 澱が溜まるように、なんとなく、気分が沈むこともある。
 ぐるぐると頭の中を繰り返し駆け巡る無意味な思考。
 そこから少しでも逃れたくて、ただ足だけを動かして前へ進む。

 傾いていく陽射しに道の両脇に立つ家々の影が長く伸びていく。
 雨でも降ればいい。風でも吹けばいい。
 嵐でも来ればいい。

 少しの間でいい。

 何も考えたくないんだ。

 

[2004/07/03]