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夜に彷徨う魂に断罪を

 

 人は何かの犠牲なしには、何も得ることは出来ない。
 何かを得ようとすれば、同等の代価が必要となる。
 それが等価交換。
 労働に対する報酬。
 努力に対する結果。
 罪に対する罰。
 それらも全部、等価交換という言葉で片付く。
 なら。
 元の身体に戻りたいぼくたちは、いったいどれだけの代価を払えばいいのだろう。

 ふと足を止めて、ぼんやりと月を見上げる。
 足元に猫が一匹、擦り寄ってきた。
 首に赤いリボン。近くの飼い猫だろうか。
「早くお家に帰りなよ。家の人が、心配するよ」
 小さく鳴き声を上げる猫にそう告げて、再びゆっくりと歩き出す。

 賢者の石の代価は、複数の人間の命。
 誰かを犠牲にしなければ、叶わない願いなら。
 いっそこの場で断罪を。

 

[2004/06/19]