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腐草と蛍

 

 何気なく頁をめくった本の中。
 その記述にふと手を止めてみた。
 本を裏返して表紙に書かれた題名を確認する。
 書かれているのは、砂漠を越えて、更に海を越えたことろに位置する遠い国に関する事柄。

「・・・・蛍ってのは、あの蛍だよな・・・・」

 南方で見た覚えがある。
 暗がりにぼんやりと光って、綺麗なんだか不気味なんだかよくわからない。
 しかも、あの光が明滅するあたりが、更に。

 がりがりとペン先で頭を掻き、手近な白紙を引き寄せる。
 腐った水草からあの光る昆虫が発生する。
 この記述が正しいとしたら。

「・・・・いったいどういう構築式だよ、これ」

 

「腐草為蛍」七十二候のひとつ。現在の暦だと6月10日ごろ。[2004/06/10]