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償いではなく

 

 ジュドウに真実を告げることができなかった。
 戻ってきた娘を土に還すこともできなかった。
 そうして、我々の罪とは何の関係もない少女をこの虚偽に巻き込んだ。

「お誕生日おめでとうございます。ロザリーお嬢様」
「ありがとう、ジュドウ」

 他人の名前で呼ばれて、他人の誕生日を祝われて。
 複雑な表情で笑う「娘」。
 彼女が本当にロザリーだったならと思ったことがないと言えば、それは嘘になる。
 彼女がどうしてロザリーじゃないのかと理不尽な思いを抱いたことも、ないとは言えない。

 けれども。

 あの子の誕生日もきっと祝ってやろう。
 あの子の本当の名前を呼んで。
 せめてもの罪滅ぼしとかそんなものではなく。
 ただ、あの子が本当に喜ぶ顔を見るために。

「さあ、そろそろ休みなさい、"ロザリー"」
「ええ、"お父様"。おやすみなさい」

 願わくば、それが贖罪でないことが、この子に正しく伝わりますように。

 

[2004/04/22]