>保管庫

心配

 

 書庫の薄暗い明かりすらぎらぎらとして不快だった。
 本を開いても文字が頭に入ってこなかった。
 集中しろ、集中しろ、と自分を叱咤しても、意識はすぐに分散して、結局一冊も読めやしなかった。
 多分そんなだから、この弟に見抜かれたんだと、有無を言わさず押し込まれたベットの中、思った。
「ぼくは怒ってるんだよ、兄さん」
 わかってるの?と、強い口調で問い詰められる。
 ずきずきと眼球の裏が痛む。
 少しでもそれから逃れようと枕にこめかみを押し当てれば、自然にそっぽを向くことになった。
 荷物みたいに肩に担がれて、そのまま書庫から引きずり出されて。
 降ろせと喚いても、こいつは聞き入れなくて。
 結局、図書館の敷地を出たところでこっちが諦めた。
「兄さん」
「・・・・うるさい」
「うるさいって何だよ。ちゃんと聞いてるの?わかってるの?」
「・・・・頭に障る。響いて余計痛い」
「・・・・・・・・ごめん」
 勢いを潜めた声に、項垂れる気配がする。
 のそりと仰向けの姿勢に戻ると、枕元の弟は大きな身体に似合わず、ちんまりと項垂れていた。
 その姿に思わず苦笑が漏れる。
 しょうがねぇな、まったく。
 横になったまま手を伸ばして、辛うじて届いた指先で面頬を撫でる。
「薬、貰ってきてくれよ。このままじゃ、寝ようにも寝れないからさ」

 

[2004/04/13]