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口惜しい

 

「・・・・っ!」
 びりりとひときわ激しく走った痛みに歯を食いしばる。
 倒れこむものかという意志の力が、壁に爪を立てさせた。
 無理やりにもう一歩を踏み出す。
 じわりと首筋に汗が滲んだ。
「・・・・ぅ、ぐ・・・・っ」
 さらにもう一歩を進んだところで、痛みに強張る身体が、バランスを保てずに傾ぐ。
 そのまま膝を付くのを、押しとどめることはできなかった。
 荒れた呼吸が咽喉から溢れる。
 どこが痛いのかもわからない。
 窓から差し込む陽射しが、床にくっきりと境界線を引く。
 もうすぐ、弟か誰かが昼食が出来たと告げに来るだろう。
 こんな姿を晒すわけにはいかない。
 立ち上がらなければ。
 頭はそう思っても、身体は利かない。
 治まらない痛みを堪えながら、なんとか脚を引きずり動かして、壁に背中を預ける。
 せわしなく上下する肩。
 ぽたりと顎の先から汗が落ちる。
「ちくしょう・・・・っ」
 そう吐き捨てることしか出来ない自分が口惜しい。

 

[2004/04/06]