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いつか消える

 

「"この世にいられない"、か・・・・」
「何?」
 ふと呟いた言葉に、鎧クンが律儀に聞き返してきた。
「この血印」
 かつん、と拳でその傍らを小突く。当たり前だけど、金属の音がした。
「これに触るなって言ったでしょ。この世にいられなくなるからって」
「うん」
「それって、死ぬってこと?」
「・・・・死ぬ、のかなぁ・・・・」
「普通、この世におさらばするってのは死ぬってことなんじゃない?」
「・・・・でも、死ぬってさ、普通は、心臓が止まって、呼吸が止まって、そういうことでしょ?」
「そりゃそうね」
「でも、ぼくは、心臓もないし、呼吸もしてない」
「・・・・そうね」
「それでも、死ぬって言うのかな?」
「・・・・言うんじゃない?」
 ふぅ、と小さく溜息を吐き出す。
 あたしもまっとうな道歩いてないけど、この鎧クンも結構困ったもんだ。
「ねぇ」
「何?」
「死ぬってさ、心臓が止まることじゃないのよ」
「?」
「命が消えること。それが死ぬってこと」
「・・・・命?」
「そ。あんただって命がないわけじゃないでしょ。こうして話してるんだし」
「・・・・魂だけでも命って言うのかな・・・・」
「魂があるから命なんでしょ。それとも、"自分は生きてない"とか言うわけ?」
「・・・・言わないよ」
「なら、あんたも"死ぬ"のよ。いつかね」

 

[2004/03/23]