>保管庫

霾(つちふる)

 

 空は、晴れていたけれども、青くはなかった。
 東の砂漠から吹く風が、細かな砂を運ぶ所為だ。
 砂漠の向こう側、そこから更に東の国にも、似たような現象が起こる時期があるというのは、いつだったか何処かで読んだ本に書いてあった知識だ。
 そういえば、とても不思議な言葉で、その風は呼ばれていた気がする。
 遠い遠い東の国の人たちは、西に神様の国があると信じてた。
 きちんと思い出せないけれど、確か、そんな感じの名前。
「アル、行くぞ」
 トランクを担ぎ上げた兄さんの声に、意識を呼び戻される。
 駅舎から伸びた線路は、西へ西へと続いていた。

 

[2004/02/29]